面会交流の実施ができない場合にどうしたらいいでしょうか?

離婚時に面会交流を取り決めたのに守られていない場合は「面会交流調停」

離婚時に「子どもには会ってもいいよ」と言われたのに、離婚後に気がつけば数か月が経過していて子どもとの面会交流が実現していないといった場合にはどうしたらいいでしょうか?

まず、別れた相手との交渉が約束通りに成立するのかが鍵ですので、連絡をとってみて交渉してみてください。

それでも相手が何らかの理由で子どもを会わせたくないということでしたら、離婚時の取り決めがどのようにされているのかにより対策が違います。

協議離婚で口約束で取り決めしたという場合には、相手に「面会交流調停」を申し立てすることをお勧めします。

「面会交流調停」とは. 同居親と話し合っても面会交流の実施や方法を合意できない場合に、家庭裁判所で話し合いをするという方法です。

裁判所の「調停」を利用して面会交流の方法を話しあいます。調停委員が間に入り、父母の間を調整してくれます。別れた相手と直接顔を合わさずに済み、調停委員が面会交流の実施に向けて同居親を説得してくれることもあります。

調停を行ってもどうしてもお互いの意見が合わない場合には、面会交流調停は「不成立」となります。

この場合は「審判」に進み、家庭裁判所が面会交流の方法を定めます。 審判では、子どもの福祉に反する障害となる事由がなければ、面会が認められることが多い傾向です。

しかし審判までいくと、同居親は裁判所が決めた面会条件に仕方なく従うというようなことになるため、良い面会交流を行うためにはできるだけ揉めずに調停で話し合いがつくことが理想です。

面会交流調停の取り決めが守られない場合は「履行勧告」

離婚時に調停により面会交流を行うと取り決めがされたのに、相手が面会交流に応じてくれないという悩みをお抱えの方もいらっしゃると思います。

そんな場合の対応手段として「履行勧告」があります。 「履行勧告」とは、家庭裁判所から相手に「裁判所で決まったことを守ってください」と促してもらう手続きです。

履行勧告の手続に費用はかかりませんが、相手が勧告に応じない場合は実施を強制することはできません。強制力はなく、相手が守らなくてもペナルティーはありません。

単なる注意という扱いになりますが裁判所からの注意なので効果的かと思います。

「履行勧告」できる内容は、調停・和解条項または審判・判決の主文に記載のあるものに限ります。

「履行勧告」は書面により申請します。裁判所にある申し立て書に調停調書や審判書のコピーを添えて、面会交流の取り決めがされた家庭裁判所に申し出をします。

債務名義があり面会交流が実施できない場合は「間接強制」

先にも書きましたが、「履行勧告」には強制力がありません。「履行勧告」を行ったのに誠実に対応されない場合には「間接強制」という手続きがとれます。

「間接強制」とは、面会交流の約束に応じない監護親に対して、「面会に応じないときには1回あたり〇万円」などの制裁金(間接強制金)を課すことによって、自発的に義務の履行を促す制度です。

但し、面会交流の拒否があれば常に間接強制が認められるというわけではありません。

「間接強制」が認められるためには、条件があります。

「間接強制」を行うためには、面会交流の内容について、調停や審判で取り決めることが必要です。調停で取り決めた場合には調停調書が、審判で取り決めた場合には審判書が債務名義として必要になります。

離婚時に協議離婚で公正証書を作成した夫婦、公正証書では、債務名義にはなりません。そのため、まずは面会交流調停を行う必要があります。

また、債務名義(調停調書、審判書など)においては面会交流の内容が特定されていることが必要となります。

面会交流の内容の特定性について、最高裁判所は、「面会交流の日時または頻度」、「各回の面会交流時間の長さ」、「子の引き渡しの方法」を例示しています。

面会交流の取り決めをする際には、「具体的な日時や場所、方法などについては、当事者で協議して定める」など抽象的な取り決めをする場合もありますが、この内容だと「間接強制」はできません。

そのため、将来、面会交流の実現が困難となりそうな事情がある場合には、「間接強制」を視野に入れて、面会交流の内容(日時や頻度、時間、引渡し方法等)については、明確に取り決めるようにしたほうがいいでしょう。