面会交流アプリを使った支援
「raeru」というアプリ
「raeru」というアプリをご存じですか?
面会交流の連絡調整を当事者が直接やり取りするためのアプリです。
特徴としては、お互いの連絡先を交換せずにアプリのみで面会交流の日時・場所を調整できる点です。また、定型文が使えるので事務的に必要なワードだけ送ってやり取りをすることもできます。
私はこのアプリの紹介を受けた時に、自分たちで面会交流の調整ができる親なら別にLINEやメールアドレスの交換は問題がないのではないかと思い、当事者間だけならあまり必要性を感じないというのが正直な感想でした。
しかし実際には「raeru」の登録会員数は2023年11月現在2500人にもなっています。。
多くの人たちがアプリの利点を生かして面会交流の連絡調整に使っていることがわかります。
面会交流の調整ができて日時確定がされると、前日や当日の1時間前にリマインドされるといった便利な機能がついています。
こういった機能はLINEやメールでは行えないのでいいところだと思います。
また、LINEやメールでは見落としが出やすいと思いますが、アプリなら面会交流のことだけ管理してもらえるし、通知機能を入れておけば見落とすこともないのもメリットだと思います。
面会交流の連絡調整
これまで、私たちの支援はLINEを使って「お母さんのグループ」「お父さんのグループ」というように立ち上げて、そこに連絡調整をするスーパーバイザーと現場支援を担当するサポーターが入りおこなってきました。
LINEは誰もが利用している便利なツールですが、個人アカウントは1アカウントしか持ことができないため、面会交流の支援のグループラインに個人アカウントを利用することになります。プライベートなLINEアカウントを使って連絡調整をするのに抵抗がありました。
また、LINEのタイムラインはどんどん流れていくので過去のやり取りを探すのが大変でした。
お父さんとお母さんのグループを別々にしてやり取りをするのも、間違えてメッセージを送ってしまうことがないように気を遣うことも多く、メッセージの取り消しができないLINEではミスをした場合のリスクが高いこともデメリットでした。
支援団体として「raeru」を利用
私はこのアプリを見た時に、支援団体の連絡調整に生かせるといいなと思いました。
2023年8月より、私たちは面会交流の連絡調整を日本初の試みとしてこのアプリを使って行っています。
従来からあった「サポータープラン」に大幅に機能を拡充してもらって、そこに支援者が参加して連絡調整を行うということです。
もともと、父と母が2人で連絡をするために作られたアプリなので、第三者の連絡調整に利用するためにはいくつかの仕組みを変更しなくてはならないところがありました。
試運転を行いながら開発者に要望を伝えて、使いやすくカスタマイズしてもらいました。
当事者同士ではメッセージも定型文も自由にやりとりができますが、サポータープランでは当事者同士が直接やり取りできない設定を作れます。
おやこリンクサービスを利用する方は、お互いに接点を持ちたくないので第三者機関を利用しているのでアプリ内で自由にやり取りができる機能は必要ありません。
なので、直接のやり取りや同じアプリ内にいても接点を持てないような配慮がされています。
使い方はLINEと同じように、父と母のそれぞれのグループにて連絡調整を行い、面会交流の確定をサポーターが作る、事前にリマインドされる。面会の当日は付添型の場合にはサポーターが面会交流の開始ボタンと終了ボタンを押す。
開始と終了の報告がアプリで自動的にできるために、これまでLINEで連絡していたサポーターの手間も軽減されました。
予定されている面会交流の一覧をアプリ内で管理できるのも便利です。
パソコンでは使えないとか、利用者がアプリに慣れるまで大変というデメリットもありますが、それも今後は改善するために開発者と相談しながら工夫しているところです。
アプリを使った自立支援
アプリのいいところは自立に役立つところです。
もともと当事者間で利用するニーズで作られたアプリなので、将来的にはサポーターがいなくなってもアプリを使ってご両親が面会交流の連絡調整ができるようになっていってほしいと考えています。
実際には付添型の支援から、連絡調整のみの支援になり、その場合には面会交流の開始や終了報告は当事者間で共有される意思疎通になります。
定型文を使えばお礼のメッセージも送れるので、段階を追って「定型文」→「自由メッセージ」というように支援からの自立に向かってほしいと考えています。
離婚の葛藤を乗り越えて、親として関係の確立ができたらいいなと思いながらアプリを使った支援を行っています。
面会交流アプリ raeru
新川てるえ