久しぶりに会う親が陥りがちな“過去の押し付け”と、子どもの心理
おやこ交流支援の現場で、私たちは離れて暮らす親御さんの深くて温かい愛情をたくさん目の当たりにします。
「前回の交流から時間が空いてしまったけれど、喜んでくれるかな」
「あの頃の笑顔をまた見せてくれるだろうか」
そんな想いから、久しぶりにお子さんに会う親御さんは、本当に入念な準備をして交流の場にやって来られます。
幼い頃にふたりでよく行った思い出の公園やレストランを選んだり、
「昔、一緒に夢中で観ていたアニメ」の話を一生懸命に振ったり。
中には、「昔いつも抱っこして一緒に寝ていた、ボロボロになったお気に入りのぬいぐるみ」を大切にバッグに忍ばせて持参された親御さんもいらっしゃいました。
そのすべてが、「愛しているよ」「あなたとの時間を今も大切に覚えているよ」という愛情の表現なのだと、私たち支援者には痛いほどよく分かります。
大人は「思い出」で生き、子どもは「未来」を生きている
けれど、そんな親御さんの熱い想いとは裏腹に、お子さんの反応がどこか冷ややかだったり、困ったように曖昧な笑顔を浮かべたりすることがあります。
「え、そのアニメ? もう観てないし、あんまり覚えてない」
「そのぬいぐるみ、もういらない……」
冷たくあしらわれたように感じて、胸が締めつけられるようなショックを受ける親御さんも少なくありません。
けれど、どうか知っていただきたいのです。お子さんは親御さんを拒絶しているわけでも、意地悪をしているわけでもありません。
私たち大人は、年齢を重ねるにつれて過去を振り返り、美しい「思い出」を頼りに心を温めたり、生きていくエネルギーにしたりするようになります。
けれど、成長期にある子どもは、過去ではなく「今この瞬間」と「未来」だけを見て生きています。
過去の話の「しつこさ」が、関係性を遠ざけてしまう
大人の数ヶ月や1年はあっという間ですが、子どもの1年は劇的な変化の連続です。
心も体も急激に成長し、興味や関心、友達関係、好きなゲームや音楽、大切にしている「上質世界(自分にとって価値あるもの)」は、ものすごいスピードでアップデートされています。
それなのに、久しぶりに会った親から、
「昔はあんなにこれが好きだったよね?」
「覚えてる? パパ(ママ)と一緒に行ったよね?」
「あの頃は小さくて可愛かったのに」
と過去の記憶ばかりをしつこく掘り返されてしまうと、子どもはどう感じるでしょうか。
「今の僕(私)を見てくれていない」
「昔の小さな頃の自分しか好きじゃないんだ」
そう感じて居心地が悪くなり、プレッシャーや息苦しさを覚えてしまうのです。良かれと思って話している過去の思い出話が、皮肉にも親子関係をギクシャクさせてしまう原因になってしまいます。
「あの頃のあなた」ではなく、「いま目の前にいるあなた」に出会う
もし、お子さんとの距離を縮めたいのなら、思い出の引き出しを無理に開けさせるのは一度お休みしてみませんか?
過去を振り返らせるのではなく、「今のお子さん」を新しく知る時間にするのです。
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「今、学校や友達の間で何が一番流行っているの?」
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「最近、どんな音楽を聴いてるの? 好きな曲を教えて」
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「いま夢中になっていること、YouTubeで観ている動画はある?」
親御さんの記憶の中にある「幼かった我が子」を一度手放し、目の前にいる「少し背が伸びて、大人びた我が子」に、はじめましての気持ちで興味を持ってみてください。
子どもは、自分の「今」や「これからの未来」に純粋な関心を持って耳を傾けてくれたとき、「自分そのものを受け入れてもらえた」と心から安心し、笑顔を取り戻します。
親子の思い出は、過去にすがりつくものではなく、「これから一緒に新しく作っていくもの」です。
過去のアルバムをそっと閉じて、いま目の前にいるお子さんの瞳が輝く瞬間を、一緒に見つけていきましょうね。
新川てるえ
